――jurer――

こちらは、田丸まひる・張河子静の三国志、堅瑜ベース策瑜リレー小説のページです
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jurer 最終話(張河)

 誓いとちがう愛情をもって、君に会そう。
 だけど、分かっておくれよね。
 誓いとちがうが誓いにちかい。



 周瑜が自分のもとに馳せ参じたと聞いた時、俺はやはり来てくれた、と思わずにはいられなかった。


 周瑜が、まっすぐまっすぐ、俺を見る。
 「死が二人を分かつまで、そばにいて」
 もう誓わない彼が、とても真摯に俺を見た。
 「それは、先に俺がお前に頼んだ事だ」
 唇の、柔らかい感触に酔うかと思う。
 「そうだね。・・・そうだね」
 雨足過ぎて、静寂。
 沈黙が、恐ろしい時期があったのだ。
 こんな、穏やかな沈黙がある事を、忘れていた。
 何も知らない頃は知っていた事を、忘れていた。
 「俺のそばに、いてくれるか?」
 周瑜が、握った手に力をこめる。
 笑おうとして、失敗した顔をして。それでも息を吐いて、頷いた。
 「うん。・・・そばにいる。伯符は?」
 「いるよ。いさせてくれ」
 笑おうとして、失敗した顔になる。
 二人して、ちょっと涙ぐんで、互いを想い合って、抱擁する。
 これは大切だ。
 俺の大切なものだ。
 何も知らない頃に知っていた事を、思い出した。
 生涯、大切なものだ。



 「公瑾、ちょっと外出てみろよ。星が綺麗だ」
 すっかり雨も止んで雲もはれた空を見上げる。
 満天の星というのだ。月も、綺麗だった。
 「ほんと、綺麗だね」
 長い裾を引きずらないように気をつけながら、周瑜は出てくる。
 「寒くないか?」
 小さく問えば、大丈夫だよと笑った。
 肩を抱き寄せて、腕の中に包み込む。
 体温が心地よいということも、思い出した。
 「おや、伯符様もおられるね」
 ほんの少し欠けた十六夜を見上げ、周瑜は言う。
 俺が昔よくした自慢話を、しっかり覚えているらしい。
 「あれはお前を見守るための化身だからな。いなきゃ困る」
 やっつけ、少し俺は苦笑しつつ言った。
 きろりと周瑜がこちらを見る。
 「・・・何だよ」
 「ふぅん。でも、お月様は薄情だからね。欠けたり満ちたり消えたり隠れたり。あまりアテにならないかも」
 「む」
 月に目を移す。十六夜。早速欠け始めた月が煌々光っていた。
 「うーむ、そうだなぁ。俺も結構、薄情者だからなぁ―――・・・」
 月明かりに周瑜が浮かぶ。意地の悪いことを言う俺を、意地の悪い目で見上げていた。
 「ひどいな」
 「おう。だからさお前、もし俺がさっさとお前を置いてったら、別に俺に操立てなんかしなくていいからな」
 くしゃくしゃに周瑜の髪を撫でる。
 周瑜は少しだけ不敵に笑って、腕からすりぬけた。
 「分かってるよ。そんな薄情者、あっという間に忘れてやるんだから」
 「や、少しくらい覚えててくれてもいいだろ」
 軽い不満の声に、周瑜が裾を翻す。
 月下美人、まるで踊るようだ。
 「あはは・・考えておくよ」
 そうして笑う。屈託なく笑う。
 ああ、まるであの頃、そのまま。
 そっと近づいて、滑らかな頬に手を添える。
 「・・・そういうお前の笑った顔、本当に久しぶりに見たな」
 くすぐったそうに、周瑜ははにかんだ。
 「伯符」
 「やっぱり、すごく、綺麗だ」
 もう見れないと思っていた。
 きらきら、君が笑う。
 この星空のように、きらきら笑う。
 添えた手に、周瑜の手が重ねられた。
 「・・・俺はやっぱり、父上に似てるか?」
 「そうだねぇ、・・・やっぱり似てるかな」
 「そっか」
 「うん。でも、伯符は伯符だって、漸く分かった。
  ―――・・・貴方は、今私が一番大切だと思っている、孫伯符だよ」
 また、周瑜はまっすぐまっすぐ、俺を見る。
 お前も、逃げないんだな。
 もう、誓わない。
 それでも生涯大切なひと。
 「俺とお前は、義兄弟で、恋人で。それからかけがえのない親友だ。こんな相手、きっと生涯一人きりだよな」
 「うん」
 

 誓わない関係なんて、それはまるで“友達”のようだけれど。
 そんな間柄でいられるのは、きっと俺だけだから。
 やっぱり俺は、俺である事を誇りに思うよ。
 「明日から、またよろしくな、親友!」
 満天の星空。世界はこんなにも、煌めいている。





                      完
 
| 張河子静 | jurer | 23:35 | comments(0) | trackbacks(0) |
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