――jurer――

こちらは、田丸まひる・張河子静の三国志、堅瑜ベース策瑜リレー小説のページです
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jurer 第20話(田丸)

 絶対に誓わないと、伯符は言った。
 誓いも許しも、もういらないのだと。
 誓いが、私をずっと束縛してきたのだと。

 救われる。
 こぼれた涙を、掬われる。

 でも、伯符。私は、束縛なんて怖くない。苦しくなんて、なかった。
 ――怖くない?
 ――苦しく、なかった?
 言いかけたくちびるをふさがれる。
 「同じことを繰り返して、お前を苦しめるのは嫌だ。だから、俺は誓わない」
 なんでそんな、穏やかに笑える。
 「そのくせ、一緒にいて欲しいなんて、やっぱり自分勝手かな」
 「伯符……」
 自分勝手なのは、私だ。
 背中を抱きしめてくれる腕を外して、長い指を探す。
 指をからめると、ぴたりと繋がったような気がする。
 額に押しつけると、安心できたのです。
 「伯符は、自分勝手なんかじゃないよ」


 文台さまは、私に誓ったわけじゃない。
 ずっと瑜をおそばにおいてくださいますかと、聞いたときにも、困ったように笑っていた。
 分かっている。戦に命をかける者が、そんなこと約束できるわけない。
 だから、誓ったのは私だ。
 いつまでも文台さまのそばにいると。
 生きるときも死ぬときもご一緒しますと。
 無理やり誓ったのは、私だ。
 「瑜、自分で自分を束縛するな」
 「違います。束縛なんかじゃない。瑜が、こうしたいのです」
 「お前が苦しむ姿など、」
 「見せません」
 きつくからめた小指を、離さないでいてくれたこと、どんなに嬉しかったろ。
 「だが、瑜、後追いだけはするなよ」
 あれは苦笑じゃなくて、心からの笑みだった。
 今の伯符に似た、穏やかな笑い方。
 「なぜ?」
 「俺が望まぬ」
 「……御意」
 だから、今も、生きながらえている。
 だから、もう一度、今度こそ、伯符と。


 ――文台さま、瑜は、

 「もう、誓い、破ってもいいんだ、公瑾」
 からめあった手を、孫策も自分の額に押しつけていた。
 二人して、祈るようなかたちになる。
 でも何も祈っていない。何も、誓っていない。
 「だから、公瑾、誓いなんて関係なしに、」
 ――瑜は、
 「伯符、」
 「公瑾?」
 いきなり言葉を遮られて、孫策が怪訝な顔をする。
 その額に、今度は自分から額を押し当てた。
 「もう、一人にしないで、」
 「……公瑾」
 孫策の目尻が歪む。そうじゃない。
 でも、嗚咽でうまく喋れない。
 「っ、なんて、もう、言わないから、」
 ――もう誓いません。
 「そばにいて」

 「死が二人を分かつまで、そばにいて」
 まっすぐまっすぐ、見据えた。


 受け入れるのではなく、自分から押しつけた唇は、柔かった。
 気づいたらもう、雨がやんでいた。
 静か、だった。


                 続く
| 田丸まひる | jurer | 23:22 | comments(0) | trackbacks(0) |
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