――jurer――

こちらは、田丸まひる・張河子静の三国志、堅瑜ベース策瑜リレー小説のページです
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jurer 第19話(張河)


 簡単にこぼれ落ちるんだ。
 それは、自分にとって周瑜の心のようなものだった。
 何度も。掴めず、掴めず、こぼれ落ちた。
 今も思う。掴めているのか、またこぼれ落ちるのか。
 周瑜の髪は、とても綺麗に、こぼれ落ちた。


 だけど、ああ、俺はいつも己のことばかりで気付くのが遅い。
 「だったら、誓って」
 こぼれ落ちていくものをどうすることも出来ずに。
 ひたすら嘆いてきたのは、周瑜の方なのだ。
 恐れてきたのは、周瑜の方なのだ。


 手を伸ばす。
 細い肩に触れる。
 僅かに、震えていた。
 「伯、符」
 引き寄せる。
 抱き締める。
 震えはおさまらない。
 「公瑾」
 頭を撫でる。
 背中を撫でる。
 細い息が吐かれた。
 誓いにちかい情をもって、周瑜を愛そうと決めていた。
 けれど決して誓いはしないのだと、決めていた。 
 「・・・誓えば、お前は安心するのか?」
 周瑜の額が、胸に押し付けられる。
 答えなかった。
 「いつでも誓ってやる。それでお前が、幸せになるのなら」
 息を殺す周瑜は苦しそうで、何度も背中を撫でる。
 答えは求めない。
 俺は分かっていて、言っている。
 「だけど、そうじゃないんだろう?」
 周瑜の顔を仰向かせる。
 目を合わせた。逸らすことを許さずに、手を添える。
 黒い、赤い、光を目尻で弾く、目。
 あの日の目も、このようだった。
 俺が決して誓わないと決めた日の。

 「だから俺は、絶対に誓わない」

 周瑜の顔が、崩れた。
 「・・・いや、だっ・・・」
 絞り出すような悲鳴をあげて、周瑜は溜め込んでまだ涸れない涙を流す。
 「そうしたら・・・・私、どうしたらいいのか・・・分からないよ」
 周瑜の手が背中を抱く。服ごしからでも爪が食い込んだ。
 「公瑾」
 「誓って、・・・誓ってよ・・・」
 「公瑾」
 「どうして、」
 あのな。
 俺はあの日、憎んだのだよ、公瑾。
 お前を、このようにした。
 誓いというものを、俺は憎んだのだ。
 誓いがお前を、このようにした。
 そうだろう?
 かように、かように、ひどい束縛を。
 「俺は・・・誓いを破りたいんだ」
 上手く伝わらなかったかもしれない。
 だけど周瑜は目を見開き、唇をきつく結んだ。
 俺は、誓いを破りたい。
 そうしなければ、お前はまたこぼれ落ちてしまうだろうから。
 それはとても強靭なもので、楽に破棄せられないものではあるけれど。

 伯符が私を愛してくれるのと同じように、愛するなんて許されますか。
 愛していいのかどうか分かりません、文台さま。

 誓約は制約。
 いつまで守ってりゃいい。
 いつまで父に、許しを請えばいい。
 もう時効だ。それを俺が、教えてやる。
 周瑜の頬に流れる、とめどない涙を拭った。
 よく聞け。
 俺は今から、お前達の誓いを否定する言葉を吐くから。
 「愛していいんだ。愛されていいんだ。許しなんか、いらないんだ。誰も・・・お前を責めたりなんか、しないから」
 もし、俺が誓い、それでもお前を置き去りにしたら、今度は誰が我々の誓いを破ってくれるだろうか。
 誓えばお前は、俺を一途に想ってくれるのかもしれないけれど。
 同じ思いは、させたくない。
 「伯符、私、は・・・」
 唇で、言葉を塞ぐ。
 愛しいな。

 あの頃、俺は自分のことしか考えられない子供だった。
 今、お前を一番に考えてやりたいと、思う。
 「同じことを繰り返して、お前を苦しめるのは嫌だ。だから、俺は誓わない」
 だから、お前も誓わなくたっていいよ。
 父を愛したように、愛してくれなくたっていいよ。
 「そのくせ、一緒にいて欲しいなんて、やっぱり自分勝手かな」
 ただ、お前を愛しく想う、俺の気持ちだけ認めてくれ。


 誓いとちがうが、誓いにちかい程、お前のことを愛しているよ。



                         続く
| 張河子静 | jurer | 00:42 | comments(0) | trackbacks(0) |
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