――jurer――

こちらは、田丸まひる・張河子静の三国志、堅瑜ベース策瑜リレー小説のページです
<< jurer 第14話(田丸) | main | jurer 第16話(田丸) >>
スポンサーサイト

一定期間更新がないため広告を表示しています

| スポンサードリンク | - | | - | - |
jurer 第15話(張河)
 優しく、優しく突き放す。
 そうすることが、最後の矜持のように。




 どうしようもない矛盾の中に、身を置いているのだと言う自覚はあった。
 周瑜が腕にすがりつく。
 僅かな間でさえ、寂しかったのだと言わんばかりに離れなかった。
 「風邪を引いて、不安になったか」
 矛盾している。
 頭を振って否定する周瑜を、正直俺は持て余した。
 俺も、周瑜も。矛盾している。
 優しくされたくないくせに、優しくされないと壊れそうな周瑜と。
 いなくなって欲しいと願いながら、逃げる力を失った周瑜に安心する俺と。
 ここはひどく居心地が悪く、耐え難いほど心地よい。
 「むせないようにしろよ」
 白湯を持つ手に添えた手は、振り払われなかった。
 むしろ、もう片方の手で離れないよう阻まれた。
 何だろうな。この、耐え難い。
 「……ない、で」
 「なに?」
 器を置いた周瑜の手が、俺の袖を掴む。
 強く押し付けたせいで、指の先が白かった。
 「……に、ないで……」
 か細い声。
 蜻蛉の泣くような。
 しかし、俺は確かに聞いた。
 「・・・・・」
 この、耐え難い、心地よさ。
 この、耐え難い、優越感!
 「・・・・・」
 あ…あ、くだらなすぎる。弱みにつけ込んだ優越感か、反吐が出そうだ。
 周瑜は泣かない。でも、今にも泣き出しそうだった。
 
 一人にしないで。

 「……分からないよ、公瑾」
 こんな時だけ甘えるんじゃないよ。酷じゃないか。
 「公瑾」
 この優越感は危険だろ。今だけなんだろ。後で痛い目見るんだろ。
 ・・・だから、俺は突き放すよ。優越感ごと突き放さなくては。
 「聞こえない」
 それでも、お前が痛まないよう。
 優しく、優しく突き放す。
 俄かにはそうとは分からない程、優しく。
 頭を撫でて、抱きしめた。





 「一応、聞いとくだけでいいから」
 寝台の横に胡座を敷いて、竹簡をいくつか手に取る。軍の編成やら、輜重の配分やらがまとめられている分を、特に選んだ。
 「徳謀に、お前に軍の内情を確認してもらってるって言っちゃったからさ。もっと気の利いたことが言えれば良かったんだが、悪いな」
 苦笑すれば、周瑜が首を振る。
 一つ一つの事項にいちいち頷く様が、健気で可愛かった。
 たまに、何かを言いたそうに口を開くのを制止する。
 明日聞くから、と笑うと周瑜は少し釈然としない顔をした。
 「・・・何か、懐かしいな」 
 「・・・?」
 くしゃりと前髪を掻きあげて、褥を掛けなおしてやる。
 少し顔色の良くなってきた頬を撫でると、周瑜はくすぐったそうに身じろいだ。
 「従軍する前。お前、しょっちゅう熱出してさ。看病すんの、大変だった」
 「・・・・伯、符に。・・頼んだ・・ぼえ、なかったよ」
 「可愛くないなー」
 従軍する前。多分一番、幸せだった頃だ。
 「着替えるか?薬効いて、汗かいただろ?」
 周瑜の衣はまだ出していなかったので、自分のものを当ててやる。
 幸せだった頃には大差なかった体格が、確かな差を証していた。
 「ちっとでかいが、我慢、な」
 多分、俺はその衣を明日になったら捨てるんだろう。
 「伯符」
 「ん?」
 「・・・ありがとう」
 苦笑した。
 「そろそろ、寝た方がいいな。明日は庇えんぞ」
 また、髪を撫でて額に口付ける。
 体格はこんなに差が出来たけど。
 あの頃から出来ることは何一つ増えていないな、と思うとおかしかった。
 あの頃出来なくて、今出来ることがもしあるのなら、それは何なのだろう。

 優しく突き放す、ことだけだろうか。
 離れようとした瞬間、周瑜が無意識に伸ばした手を、俺はやんわりと褥の中に戻した。





                  続く
| 張河子静 | jurer | 23:04 | comments(0) | trackbacks(0) |
スポンサーサイト
| スポンサードリンク | - | 23:04 | - | - |









http://jurer.jugem.jp/trackback/15
  12345
6789101112
13141516171819
20212223242526
2728293031  
<< August 2017 >>

このページの先頭へ