――jurer――

こちらは、田丸まひる・張河子静の三国志、堅瑜ベース策瑜リレー小説のページです
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jurer 第14話(田丸)


 馬鹿か、と罵られた。
 足手まといでは困ると、断言された。
 それでも孫策は、馬鹿な足手まといを、まるで壊れ物を扱うように丁寧にぬぐった。
 どうしようもなかった。
 寒くて、喉が痛くて、孫策への謝罪もままならない。
 代わりに孫策の手を握りしめても、まだ寒いのかと新たな褥を掛けられた。
 「薬と白湯を取ってくる」
 優しく髪を撫でられても、何も言えない。
 「静かに寝てるんだぞ」
 一瞬だけ苦笑した孫策が、すぐに背中を向けて外に出て行く。

 怖かった。本当は怖かった。
 出て行こうとする孫策に、必死になって手を伸ばしたが、届かなかった。
 声が出ないせいで、気づかれもしない。
 怖かった。
 一人は。
 あのときと、同じ。


 それから孫策が戻ってくるまでの時間は、長かった。
 実際には、湯を沸かして、薬を用意してきただけなのだから、たいした時間ではないのだろう。
 でも、待つ時間ほど長く感じるものはないと、誰かが言ったか。
 眠れるはずなどなく、ただ褥の奥で膝を抱えていた。
 嫌な雨。足音が、全然聞こえない。
 孫策がいつ帰ってくるのかも分からない、不安ばかり感じていた。
 「公瑾、寝ているか」
 だから、孫策が薬と白湯を抱えて戻ってきたときにはもう、抑えきれなくなっていた。
 「公瑾、」
 孫策が持ってきたものを置く間も与えず、その腕にすがりつく。
 伯符の腕は、あたたかかった。
 思わず爪を立てそうになるのを、こらえた。
 「どうした、公瑾」
 反対側の手で薬と白湯を置いて、その手で孫策が私の髪を撫でる。
 乾いてきたな、火をつけてよかった、と軽く梳かれる。
 それでも手を離さない私を、どう思っただろう。
 「風邪を引いて、不安になったか」
 違う。そんなわけではない。
 そんなわけではないと、かぶりを振っても、あまり動くなと抱き寄せられる。
 違う。こんな風に、優しくされていいはずがない。
 それなのにこの距離を、これ以上広げたくなかった。
 「お前、苦いのは嫌いだったな」
 でも我慢しろ、と安心させようとする笑い声が聞こえた。

 目の奥がきんきんと熱くなる。
 でも、涙は出なかった。
 「むせないようにしろよ」
 白湯の器を持つ手に、手が添えられる。
 振りはらいたい。離したくない。
 「そんなに眉しかめて。苦いか」
 目の奥が熱いけど、涙が出なかった。

 「……ない、で」
 白湯を飲んでもからからの喉が、痛い。
 「なに?」
 「……に、ないで……」
 「分からないよ、公瑾」
 ひゅるりと喉が鳴る。
 「公瑾」
 一人にしないで。


                続く
| 田丸まひる | jurer | 13:23 | comments(0) | trackbacks(0) |
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